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自衛隊イラク派遣、何が問題?Q&A 

■Q&A
自衛隊イラク派遣、何が問題?Q&A 

 「人道支援なのに何で反対するの?」「サマワの人達が
歓迎しているじゃん」など、WPN実行委員会によく来る
質問にQ&A形式でお答えします。


Q1:自衛隊は人道支援のためにイラクに行っているのに
  何で反対するの?

A1:人道支援という観点から自衛隊派遣の問題を観ると、

(1)軍隊が介入することで人道支援の鉄則である中立性が
 損なわれる
(2)費用対効果からみて、極めて非効率で莫大な税金のムダ

 という問題があります。

(1)ですが、紛争地で支援活動する国際NGOの間では
「軍隊が人道支援を行うべきではない」というコンセンサン
スがあります。これは、軍隊が介入することにより、支援の
鉄則である中立性が損なわれ、結果としてNGOや国連関
係の援助機関の活動も軍隊の活動と混同され、攻撃にさ
らされる危険がでてくるからです。
 実際、昨年03年の8月には国連のバグダッド事務所が
自爆攻撃を受け大きな被害が出てしまいましたが、これ
も現地で支援活動を行っている人々の間では、米英主導
のイラク占領の下で、国連がイニシアチブをとれず、反米
組織から「国連も敵」とみなされたことが大きいのではと
言われています。
 また、2月にイラクを訪問した日本国際ボランティアセ
ンター(JVC)の熊岡道也代表理事は朝日新聞のインタ
ビューの中で、イラクで活動する100あまりの団体で構成
されるNGO調整委員会"NCCI"の代表世話人から
自衛隊派遣に関して軍と人道支援との区別が不明確だとして
懸念を表明されたと話しています。

(2)ですが、自衛隊は軍事作戦を行うことに特化した
組織(=軍隊)であり、人道支援のプロフェッショナルでは
ありません。この分野の活動ではNGOや国連関係の援助
機関の方が、はるかに経験も豊かであり、コストも低く抑え
られます。
 例えば、現在発表されている陸上自衛隊の最も大きな仕
事は給水活動だとされていますが、サマワで活動するフラン
スのNGO、"ACTED"は約6000~7000万円あれば、10万
人の人々に一年間、安全な水を配給できるとしています。
これに対し、自衛隊派遣費用は総額でおよそ377億円だと
いわれ、費用対効果で言えば、とんでもない税金のムダ使い
だといえます。
 さらに、国会答弁などで石破防衛庁長官が認めているよ
うに自衛隊は基本的にその活動を外部の助けを借りず、
全て自衛隊員が行う自己完結的な組織であり、サマワ他、
イラクで深刻な失業問題に対して充分な貢献ができていま
せん。これに対して、NGOや国連の援助機関は、現地の
人々を事務局スタッフや通訳、コーディネーター、警備員、
技術者等として雇用しています。

 
Q2:サマワの人々は自衛隊を歓迎しているじゃん。

 フセイン政権時代には抑圧されていたシーア派が多い
サマワでは、米軍やオランダ軍も、最初は歓迎されまし
た。しかし、住民の7割が職がない中で、雇用で貢献で
きなかったため、職を求める人々のデモ隊とオランダ軍
が衝突し死傷者が出る事態すら起きています。A1でも
述べたように自衛隊が失業問題で貢献することは難しい
ことでしょう。ですから、今は歓迎ムードでも、時間が
経つ中で住民の心は変わっていく可能性は高いのです。
今年2月下旬にサマワを訪れたフリージャーナリストの
志葉玲さんによれば、既に失業中の住民から「自衛隊が
来て一カ月経つが、全然姿を見かけない。我々の生活も
ちっとも変わらない」と苛立つ声が出始めているそうで
す。
 また、バグダッドなど、世界の報道にアクセスできる
都市部の人々は、ブッシュ政権にひたすら追従する小泉
政権のこともよく知っており、自衛隊派遣に関しても冷や
やかな見方が多いようです。
 さらに、「テロリスト掃討」の名目での、米軍による
住民への弾圧が激しい地域では、イラク戦争を支持し、
米英主導の占領に対して何ら批判をしてない日本政府に
対する見方は大変厳しくなっており、自衛隊派遣も占領
支援だと観られています。ですから、仮にサマワで住民
全員が自衛隊を歓迎していても、他の地域から、自衛隊
員やその他の日本人を攻撃しようとする勢力が来ること
は大いにあり得ることで、場合によってはサマワの住民
もそうした攻撃の巻き添えになることすらあるかも知れ
ないのです。 


Q3:イラクは危険!自衛隊しか人道支援ができないの
  では?

A3:繰り返し触れたように、現在の米英による占領下の
イラクへ派遣される自衛隊を含む外国の軍隊は、この
占領政策に荷担するものと見なされます。危険だから
自衛隊を出さざるを得ないのではなく、自衛隊という軍
隊だからこそ危険にさらされるのです。
 必然的に武装勢力に狙われる自衛隊員は、我が身を
守るために引き金を引く決断を余儀なくされる事態に直
面することも予測され、それを心配しています。
私たちは、狙われることが明白な自衛隊という組織を、
人道支援という名目で派遣する決断をした日本政府に
その責を問います。
 他方、イラクでは日本の様々なNGOや個人がイラク
戦争開戦前から、現地で活動しています。確かに最近
は、ソフトターゲットなどと言われるように民間人や民間
の施設を狙った攻撃も増えてきましたが、現在、多くの
NGOが、「○×地区で××××というナンバーの車が
不審な動きをしていた」など、かなり具体的な情報を定
期的に交換しあっています。また基地や宿営地などに
篭る軍隊と違い、NGOは地域に溶け込み、住民の信
頼と協力を得ることで、安全を確保しています。
 自衛隊がイラクに派遣されたことによって、恩恵を受
ける人々がいることも事実です。しかし、その支援をす
るのが自衛隊でなくNGOであれば、桁違いに費用対
効果をあげることもできますし、誤って現地の人を殺傷
することもなくなるのです。また、狙われない組織を派遣
すれば、より援助を必要とする土地を選べるということ
になります。サマワは、自衛隊にとって安全という観点
で選ばれただけで、本当に援助を必要とする地域は他
に数多くあるのですから。


Q4:自衛隊が派遣されてしまった以上、応援する
   しかないのでは?

A4:イラク戦争に参戦した米軍の兵士たちも最初は
「アメリカを守るため」「イラクに自由をもたらすため」
と信じ、誇りを持って戦地に赴きました。しかし、今は
連日の襲撃や爆発に怯え、大量破壊兵器が見つから
ず、解放するはずだったイラク人を殺したり、拘束して
虐待している等、戦争の大義名分が崩壊した中で、多
くの米軍兵士たちは何故自分はイラクに来てしまった
のか、自問自答しています。ストレスや恐怖のあまり、
中には自殺を試みる兵士までいるのです。イラク戦争
の一番の犠牲者はイラク人ですが、米軍やその他の
占領軍の兵士達もまた犠牲者なのです。
 米英主導のイラク占領に抗う武装組織が日本の自衛
隊をも敵視していることは明らかで、近い将来、自衛
隊員も米軍他現在イラクに駐留する各国の軍隊の兵士
たちと同じような苦しみを味わうことになるでしょう。
アメリカでは、米軍兵士の遺体が入った棺おけが次々と
本国に戻ってきてから、米軍をイラクから撤退させようと
いう運動が盛り上がりはじめましたが、これまでのイラク
でどんなことがあったか既に見てきている日本が、自衛隊
員が犠牲になるまで、ただ待っている理由はありません。
自衛隊が派遣されてしまった今だからこそ、一刻も早い
撤退を求めていく必要があるのではないでしょうか。


Q5:とにかく日本は国際貢献をしなくてはいけない
   のでは?

A5:確かに日本が持つ経済力や技術力は国際社会
に役立てられるべきです。また憲法9条にみられる
平和主義も、私達が思っている以上に多くの国々で
高く評価されています。
 しかし、イラク戦争においては、世界の国々がアメリ
カの独善的な先制攻撃を批難する中で、日本は真っ
先に支持を表明し、この間、日本が買った数十兆円
という莫大な額の米国債も、アメリカ政府の資金源と
なり、ブッシュ政権の好戦的な政策を支えたのです。
こうした現実を振り返らず、「国際貢献」などとを
日本人が言うのは、おこがましいことなのではないで
しょうか。
 以上を踏まえた上で、もし日本ができる貢献がある
とすれば、外交によってイラクの再建を支援していく
ことです。もともとは中東の大国だったイラクには人
材も技術もあります。ただし、現在は復興計画を進め
ていく政府がないために、復興は思うように進んでい
ません。また、アメリカの肝いりで設立されたイラク
統治評議会は、当のイラク人からはほとんど支持され
ていません。
 ですから一刻も早く、イラク人が支持する新政府が
築かれる必要があるのですが、日本は国際社会に働き
かけ、米英主導のイラク占領から、イラク人と国連を
中心とした国づくりにシフトしていく流れを作っていく
べきでしょう。米軍他占領軍も撤退すべきですが、パワ
ーバランスに空白が生まれることによる、宗教間・民族
間の争いが表面化するかもしれません。そこで、今な
お欧米諸国に比べればイラク人から好印象を持たれて
いる日本に求められているのが、予防外交です。各勢
力の実力者の間に立ち、(時にはイラクへの支援と債
権いうアメと鞭を使いながら)話し合いによって紛争
を未然に防ぐ機会をつくることが重要なのです。


Q6:ぶっちゃけた話、不景気なんだし、奇麗事いってる
   よりも、アメリカを中心とした流れに乗らないと
   日本はまずいんじゃないの?

 ブッシュ政権は、イラク戦争と占領で莫大な金を使いなが
ら今年11月の大統領選を意識して、富裕層を対象とした大型
減税を行ったため、アメリカが抱える財政赤字は過去最大
となりその額5000億ドル(およそ55兆円)。それでもブッ
シュ政権はこれまた莫大なコストのかかる火星に有人探査機
を送る計画を立てていますが、こんな無茶苦茶な財政感覚で
は、近いうちにアメリカ経済のみならず、世界経済は大変な
大混乱に見舞われます。
 アメリカと経済的なつながりの深い日本としては、ブッシュ
政権に対して、これ以上無茶苦茶な財政支出を押さえるよう
要請するべきですが、小泉政権の下、日本はきちんと言うべ
きことを言わないばかりか、アメリカの尻拭いをするかのよう
に莫大な税金をつぎ込んでいます。
 それが円高ドル安に対する為替介入です。莫大な財政赤字
に加えテロ不安もある米ドルはその価値がどんどん下がり、
ドル安になっているのですが、日本企業の輸出を支援すべく
日銀はドルを買い続け、昨年1月から今年3月までの為替介
入額はなんと約30兆円にもなりました。しかも、買った
ドルを売ると意味がないので、これらはほぼ全て米国債とな
り、結果としてアメリカが日本に借金をする形で財政支援を
受けているのです。つまり、日本はイラク人を苦しめ続けて
いる占領を支えているのです。しかし、日本経済、特に地方
経済は壊滅状態です。商店街が「シャッター通り」と化し、
年間の自殺者が3万人を超えていますが、その多くが経済的
に追い込まれての心労が原因だと言われています。
 素朴な疑問として、日本の国民の窮状を放置して、なぜ、
アメリカに30兆円も(今後さらに米ドルが暴落して不良債
権になるかもしれないのに)貸し付けるのか。アメリカに対
する最大の債権者であるのにロクに意見もできず、アルカイ
ダのような組織を敵にまわし、自衛隊員や日本に住む人々の
命を危険にさらしてまで追従する必要があるのでしょうか?


作成:WPNメルマガチーム 
協力:フリージャーナリスト 志葉 玲 氏


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